声によって受け継がれたアイヌ語。地名や物語、手しごとに込められた想いと継承を学ぼう。
アイヌ語は、文字ではなく“声”によって受け継がれてきた言葉です。語り手から聞き手へ、そしてまた次の語り手へ——。物語は、世代を超えて語り継がれてきました。
なかでも「ユカラ(叙事詩)」や「ウエペケレ(昔話)」と呼ばれる物語は、アイヌ語による口承文芸の代表として、今や世界的にも知られる存在となっています。
アイヌ語には、自然をそのまま言葉に写したような表現が多く見られます。たとえば阿寒の旧名「シタカラ(sitat-kar)」は、「ダケカンバを採る場所」という意味。釧路の「クスリ(kusuri)」は、「川の上流に薬湯が湧いていた場所」から来ているそうです。ひとつひとつの地名に、その土地の自然、暮らし、そして祈りが込められているのです。
阿寒湖のまわりには、アイヌ文化を身近に感じられる場所がいくつもあります。たとえば「阿寒湖アイヌコタン」では、伝統芸能の舞台、工芸、料理などを通して「知る」「観る」「体験する」ことができ、訪れる人々に深い学びと感動を与えています。
アイヌの伝統では、男性が木彫りを、女性が刺繍を手がけてきました。そこに刻まれる文様は、単なる装飾ではありません。父から息子へ、母から娘へ——家族の手を通じて、心とともに伝えられてきた「記憶」そのものです。
旧地名のなかにも、当時の自然との深い結びつきが残されています。
その地を歩けば、名前が描いた風景が、今も静かに息づいているように感じられるでしょう。
アイヌ語や文化を「過去のもの」とするのではなく、今この時代にふれ、感じ、語り直していくこと。それが、この地の未来に、また新たな物語をつむいでいく第一歩なのかもしれません。
取材 / 執筆:釧路市地域おこし協力隊