自然編

釧路の空を舞う、絶滅のおそれがある野鳥たち。人と動物が共生するための保護活動と交通事故防止の取り組みを学ぼう。

釧路の空を見上げると、すばやく行き交う小さな鳥たちや、ゆったりと舞う大きな鳥たちの姿が目に映ります。それは、自然の中でたくましく生きる野鳥たちです。なかには、タンチョウ、シマフクロウ、オジロワシ、オオワシなど、日本では数が少なく、絶滅のおそれがある野鳥も含まれています。

オオワシ
オオワシ
オジロワシ
オジロワシ
シマフクロウ
シマフクロウ

こうした鳥たちが、今も釧路の空を飛び続けていられるのは、広大な自然があるからだけではありません。人の手による保護や、自然と上手につきあっていこうとする工夫や努力があるからこそなのです。釧路には絶滅のおそれのある野鳥を保護する施設「環境省 釧路湿原野生生物保護センター」があり、ケガをした鳥たちの治療や保護、自然に戻すためのサポートなどが行われています。また、動物たちが事故にあわないようにするための研究も進められています。たとえば問題になっているのが、猛禽類の交通事故(ロードキル)で、とくに事故が多く起きているのが、川にかかる橋の上です。橋は人のために造られたものですが、川という空間は水中だけでなく、空や周囲の自然も含めて、さまざまな生き物にとっての通り道。猛禽類にとっても例外ではありません。彼らは開けていて障害物の少ない川沿いを、車で言う道路の様に主に移動ルートとして利用し、時に川魚も捕獲したりします。

交通事故によりくちばしを失ってしまったオジロワシ
交通事故によりくちばしを失ってしまったオジロワシ

しかし、そのルート上にある橋が思わぬ落とし穴になるのです。橋の上空は、人のつくった道路と、鳥たちが使う空路が交わる “交差点”。その交差点で、猛禽類と走行中の車が衝突するという痛ましい事故が実際に多発しているのです。この現実を変えるために、考案されたのが「ポールの設置」でした。橋の上に立てられたポールが、鳥たちに「もっと高く飛んで」と伝えるように機能するのです。この対策の開発には、釧路湿原野生生物保護センターで保護されている猛禽類たち自身も協力しています。ただの設置ではなく、飛行行動を見極め、高さや間隔を計算して並べられたポール群。それによって、鳥たちは橋を安全な高さで飛び越えるよう導かれます。

橋の上に設置されたポール
橋の上に設置されたポール
橋の上に設置されたポール
橋の上に設置されたポール

こうした地道な取り組みが、釧路の空に生きる命をそっと守っているのです。ただ「守る」だけではなく、動物と人がともに生きていけるような未来をめざして、研究や工夫が続けられています。それは、釧路に住む野鳥たちを守るだけでなく、この地域ならではの魅力を守ることにもつながっているのです。いま、私たちが自然の中でこうした鳥たちに出会えるのは、「一緒に生きていこう」という視点と、専門家たちの努力のおかげなのです。

施設での生活の様子
施設での生活の様子
施設での生活の様子
施設での生活の様子
保護された様子
保護された様子
保護された様子
保護された様子
治療を終えて自然に戻る
治療を終えて自然に戻る

写真提供:猛禽類医学研究所

取材 / 執筆:釧路市地域おこし協力隊